教養教育開発実践センター長挨拶
弘前大学教養教育開発実践センターは、教養教育の充実と発展を目指し、現代社会のニーズに応じたカリキュラム開発や教育方法の研究を推進しています。具体的な活動内容は、教員支援や研修、教材の整備、単位互換の審査、学術雑誌の発行などです。また、全学部の教員が教育を担当する「全学担当制」により、学生は多様な視点からの指導を受け、幅広い知識と技能を身につけることができます。そして、教育プログラムの評価とフィードバックを行い、教育の質を高めるための改善を続けています。
さて、専門教育科目と教養教育科目の違いは何でしょうか。専門科目はイメージしやすいですね。大学を選ぶ際に、卒業までに修得したい知識や技能を想像したと思います。その多くは専門科目で身につきます。一方で、教養教育科目はイメージしにくいかもしれません。それは、「教養」という言葉が多様な意味を持ち、一言では説明しづらいからです。そこで、想像しやすくするために、人に置き換えて考えてみましょう。「高度な専門性を有するが、教養に重きを置かない人」を想像してみてください。そのような人が、例えば医師や教師、ロボット開発者になったら、どんな社会になるでしょうか。
つまり教養とは、個人の幸せだけでなく、社会や自然の幸せも追求するために必要なものです。人々が互いを尊重し、他者の気持ちを想像し、人間活動が自然に与える影響から目を逸らさず、公正で誠実な行動を取ることの大切さを理解するために必要です。
弘前大学の教養教育では、さまざまな学問の全体像を見渡し、異なる視点や考え方を身につける機会を提供します。また、他学部の学生とのグループワークやフィールドワーク、国際交流などの機会も提供しています。こうした機会における他者との対話や自己との対話を通じて、新しい価値観や視野の広がりが得られることの充実感を体験し、生涯学習への意欲を育むことが教養教育の基盤となっています。
また、現代の高度情報化社会を豊かに生きるために、弘前大学の教養教育ではデータサイエンス科目やプログラミング科目を実施しています。まず、情報リテラシーを習得し、データの可視化や分析を通じて課題解決方法を学びます。発展的な科目では、プログラミング言語や問題解決のフレームワークを学ぶことで、論理的思考力や創造力を養い、アイデアを実現するスキルを身につけます。さらに、AIや深層学習のアルゴリズムに触れることで、未来のテクノロジー社会を倫理的かつ持続可能にするための素養を身につけます。これらの知識と経験は、文系・理系を問わず、これからの社会を築くあらゆる人々にとって必要です。
授業以外でも教養を深める機会はたくさんあります。サークル活動では、体力や精神力だけでなく、協調性や主体性も養われます。また、伝統や文化に触れることで、感覚や感性が磨かれます。「学ぶ街は、暮らす街でもある。」 弘前は、品格のある街です。独特の津軽地域の風土が形成してきた風習や文化的アイデンティティが、今でも多く残されています。このような絶好の環境で、学びと経験を通じて、豊かな教養を身につけてください。
教養教育開発実践センター長
城田 農
教養教育の目的
大学の教育システムは、大きく分けて、専門教育と教養教育から成り立っています。
専門教育は、主に「専門教育科目」を通して行われます。「専門教育科目」とは、それぞれの学部の教育理念に基づいた学部独自の科目のことであり、それぞれの専門分野についての知識や考え方を深く学びます。
それに対して、教養教育は、「教養教育科目」を通して行われます。
「教養教育科目」とは、学部の区別なく、全ての学生が受講する科目のことであり、弘前大学では以下の目的に沿って「教養教育科目」が開講されます。
教養教育の目的
- 主体的・能動的学修への転換
- 文理融合教育による多元的な視点や思考法の獲得
- 国際共通語としての英語能力の獲得
- 地域志向性(地域が持つ強みや課題の理解、課題解決への意欲等)の涵養
- 国際性(異文化理解、多文化共生等)の涵養